……は、やめて、
(どうせすぐ あきるしw)
『拝啓、ケイコちゃん』
僕は今、高雄の港街にいます。
旗津という場所に、逃れるため…
そしたら…
なんと!
船が着いたとたん、バイクがいっぱい降りてきた!!
僕は一瞬、我が目を疑った。
疲れているのか?
まぼろしでも、見ているのか?
いや、まぼろしでは無かった…
人々は、バイクのまま 船に乗り込んでいた!
ドキドキしていた…
ケイコちゃん、僕は今、ドキドキしています。
自分はバイクを持っていなかったので、《スイスイ号》と一緒に、乗り込んだ。
次々に、バイク集団が乗り込み、
あっという間に、フロアはバイク集団で、いっぱいになってしまった。
僕は、その信じがたい光景を 記録するために、彼らに気づかれないように、シャッターを切った。
今 見つかったら、絶対にヤられる!
ジャーナリストとしての、血が騒いでしまった。
「この事実を、他の誰でもない、この僕が、世界に発信しなくては!!!」
そんな使命感が、僕を突き動かした。
撮ったあと、すぐにカメラを隠し、何食わぬ顔で 彼らから背を向けた。
「良かった。バレてはいないようだ」
僕は、その息苦しい空間から逃れるように、ずっと外を眺めていた。
長い…
まだ、着かないのか?
ようやく船は、反対岸へと着いた。
助かった!
ようやくここから、解放される!
緊張感が解け、ようやく周りを見ることが出来た。
船を降りて、後ろを振り返ると、
そ、そこには!
あの有名な建築家がデザインしたという、
あの建物が、そびえ立っていた!
僕は、動揺を隠せなかった…
これが、ずっと探し求めていた、
あの建物だとは…!
僕は、ジャーナリストとして、あの建物を夢中でカメラに収めた。
そしてすぐに、その場から立ち去った。
「撮影したのを、誰にも見られていないよな?」
ドキドキしていた…
そんな緊張で震える僕を、優しい風景が、心癒してくれた。
人々は、釣りをしていた。
「良かった。助かった。こういう風景に、出会いたかった。」
そんな事を思い、何気なく振り返ると、
そ、そこには!
おしゃれなお店が!
そこには、ミニクーパーを使った、おしゃれなカフェ、その名も、
『おしゃれカフェ』
が、たたずんでいた。
「ダメだ。おしゃれ過ぎて、これ以上は近寄れない…」
父さん、
おしゃれカフェです!
富良野には、ないですよね?
僕は、空知川を思い出し、それと重ねるかのように、しばらく運河を眺めていた。
そこに居た 二人は、
草太兄ちゃんと、中畑のおじさんに見えてしまった…
僕は涙をぬぐい、その場を離れた。
そして、海岸に出ると、
そ、 そこには!
大型船が、座礁していた!
「 フゴッ!」
まったく、この街というヤツは…
オイラを次々と、驚かせやがる。
暮れなずむ街を、僕は独り 歩いていた。
父さん、元気ですか?
蛍は、優しくしていますか?
富良野の秋は、終わりますか?
それが…
この旗津での……
出来事だったんだ。
ふはぁ。
〜 他の国から ’86
【初 旗津】