それは、青天の霹靂という言葉が、最もふさわしい出来事だった。
(まあや、「霹靂」⬅︎ へきれき ね。)
マカオタワーからバンジージャンプをする予定ではいたが、それは来年の話で、友人らを引き連れて、撮影を頼むつもりでいた。
それを前倒しして飛んだのは、単なる軽いノリからだった。
こういった『嫌なこと』は、いついつに飛びますって決めてしまうと、その日までずっと、胃が痛い思いをしなくてはならない。
僕はチキンだし、意気地無しなんで、日にちを決めて ぶっつけ本番ってのは、とても苦手だ。
だから、自分で「いける!」ってタイミングで、勢いで飛びたかった。
予行練習でもしないと、とてもじゃないが難しい課題だった。
ひとりでマカオに訪れていた僕は、対岸からマカオタワーを見るたんびに、遠くからでも分かるその高さに、改めて愕然とし、飛ぶと宣言した事を後悔していた。
マカオは カジノが24時間稼働してるので『眠らない街』のような印象があるが、それはカジノの周辺だけで、街そのものは、20時くらいには 次々に商店はおろか、飲食店もシャッターを閉めてしまう、そんな街だった。
カジノを楽しむ客が多く、カジノの店内にレストランがあるので、外で食べる必要がないことから、夜の街は、賑やかなカジノ周辺と比べ、人通りが驚くほど少なく、閑散としていた。
そんな独特の街なので、カジノ以外に遊ぶ場所は、ほとんど無かった。
外にいると、どうしてもマカオタワーが目に入るので、あまり見たくなかった僕は、カジノに引きこもるかのように、時間潰しをしていた。
ここは、ペットボトルのミネラルウォーターもタダだし、ワゴンのコーヒーや、ロイヤルじゃないミルクティー、烏龍茶もタダで飲める。
店によっては、麻雀もやってるので、ミルクティーを片手にギャラリーしてるだけでも楽しい。
その日僕も、ささやかな賭け金で遊んでいた。
そんな僕を夢中にさせるスロットマシーンがあった。
右リールにある[ U-SPIN ]
これが有効ラインに止まると、上のルーレットが回る。
ハズレ無しで、獲得枚数もエグい。
等価交換のマシーンは無いが、それでも最高レートの 20セント台。
20セント台とは、払い出しは 1ドルの1/5 なので、例えば、100クレジットなら、20ドルの払い出しになる。
割はいいけど、リスクも高い。
この台の特徴は、最低ベットは40である。
つまり 1ベットでは回らず、必ず40ベットを毎回賭ける必要があるので、クレジットはみるみる減っていく。
ただ、フルラインが当たりになるので、払い出し枚数も多い。
その1400表示の右横が、実際の獲得香港ドル。 580HKDだと単純に16倍計算で、9280円てところか。
ここで止めてもまずまずだが、最初の投資に300HKD使っていたので、飯代くらいにしかなってない。
こんな勝負なら、日本でも出来るので、せっかくマカオに来たんだから、僕はその勝ち分を転がすことにした。
つづく