ある日、東京でサラリーマンの高橋さんの携帯に電話がかかってきた。
携帯のディスプレイには、番号が表示されている、つまり、携帯に登録されている人ではない。
携帯を持っている人ならわかるかもしれませんが、知らない番号からの着信って、あまり出たくないですよね。
でも、高橋さんは何となくこの番号を知ってる気がした。番号を見ると、どうやら携帯ではなく固定電話からかけてきてるらしい。
どこかで見たことあるかもしれないが、思い出せない。
高橋さんは思いきって、通話ボタンを押した。
久しぶりと可愛い感じの女性の声がした。高橋さんはその声に聞き覚えがあった。
真木?
そう聞くと、正解と可愛い声がスピーカーから聞こえた。
真木とは高橋さんの中学と高校で一緒だった友達である。
久しぶりと一度会話始まると、止まらない止まらない、思いで話、大学の話、仕事の話、色々な事を話した。
聞くと、彼女も大学を卒業した後に東京にきたそうだ、一年と半年ぐらいいたんだけどね、今は実家に戻ったんだ。という事らしい。
今度戻ったら会おうよ、と高橋さんが誘うと、会いたいんだけどね、ごめん。と言われ、電話は切れてしまった。
かけ直そうと思い、携帯を耳から話した瞬間、ピリリリ!と着信音が響いた。かけてきたのは故郷で実家を継いだ親友からだった。
電話に出て一言目に言われたのは、真木ちゃんが亡くなったらしいぞ、だった。
真木さんは、大学卒業後に東京に出てきたが、一年を過ぎる頃に体調をくずして実家に帰ったらしい、そしてそのまま寝たきりの生活が続き、高橋さんに電話がかかってきた日に息を引き取ったということだ。
ただ不思議なのは、彼女は携帯を持っていなかったし、高橋さんの携帯番号を知っているわけがない。
それに、高橋さんに電話がかかってきた日には真木さんは昏睡状態だったらしい。
高橋さんの携帯にはその時の通話記録はない。いくら探してもなかったので、一時は夢かと疑ったが、記憶と耳に彼女の声は残っている。
記録にはないが、真木さんがかけてきたのは間違いないと信じている。